はじめに
先日保証が切れたラップトップPCを売却した(たいした値段はつかなかった)が、外へ持ち出す端末がなくなって不便を感じていた。
Thinkpad T480は家で使うにはいいものの、外へ持ち出すにはいささか重い。
そこで、軽量な端末としてLavie Direct PMを購入した。その所感を以下に述べる。
選定基準
外でPCを用いた作業を行うことが主目的 ではない 外出において持ち出せるPC、テキストタイピング、あるいはハードウェアとのインタフェースを伴わないプログラミングが実行可能なPC、という用途を想定し、以下の要件を定義した。
共通事項
- 1kg未満であること
- 物理キーボードを備えること
- キーピッチが一定であること、右側キーが小型であるなどしないこと
- できればバックライト付きであること
- できればUS配列キーボードであること
- IPS液晶を搭載のこと
- バッテリが10時間以上持続することが望ましい
PCの場合
- RAM 16GB以上、できれば32GB以上であること
- ストレージはSSDとすること
- Intel CPU / Intel Graphicsを搭載のこと
- ディスプレイはFull HD以上の解像度を持つこと
- Linuxが使用できることが望ましい
- 重量は3lbまで妥協しうる
- アプリ資産の都合上iOS端末が望ましい
- iOS端末の場合、Cellular搭載モデルであること
- USB-C接続であることが望ましい
- ペン入力デバイスを備えることが望ましい
候補
- PCと比較して軽量、長時間駆動
- ペン入力可能
- USB-C採用
- Touch IDを採用
- キーボード使用可能、ただし右側のキーはサイズが小さいため、要求を満たさない
iPad Pro 2020
基本的にはiPad Airとの比較となる
- Touch IDではなく、前世代のFace IDとなる。今後のデザイン変更を考えると、将来性に乏しい
- SoCの世代はAirより古い。ただし性能は同程度と考えられる。
- 13インチを選定した場合、キーボードの問題は解決される。
Vaio SX12/SX14
- 1kgを切る軽量さ
- バックライト付きUS配列キーボード選択可能
- RAM 32GB選択可能
- 希望の構成をとった場合高価になる
- 軽量かつ剛性の高いシャシ
- キーボードはバックライトなしのJIS配列であるが、打鍵感は非常に良い
- 2020年夏モデル改良でキーピッチおよびストロークの拡大が行われた
- Windows Helloは指紋認証から顔認証へと変更されたため、外出時の使用には減点となる
- RAMは16GBまで
- 価格は、Vaioよりは安価である
- Linuxでの使用実績がないため運用可能性にリスクがある
選定
Lavie Direct PMを選定した。店頭での印象がよかったことが大きく貢献した。
カスタムによってi7/16GB/1TB/LTE/バッテリL/3年保証とした。
商品到着後
ハードウェア
店頭での印象そのままに良い。
キーボードは、PC上での認識をUS配列として使用している。\
マークの入力には戸惑うが、それ以外は特に困らない。どうにかなる、という程度だ。
バッテリの持ちは、長時間持ち出したことがないので本領を窺い知ることができていないものの、10時間程度は動作するだろう。なお、この数値には後述するドライバの問題があると思われるので、私の使い方における参考値、という扱いとなる。
ソフトウェア
悪い。
まず、購入時ではデスクトップ常駐型のアプリが多数起動する。が、まあこれはそういうものだと思っておくしかない。添付ソフトの少ない選択肢を選んだが、あまり関係がないようだ。
次に、システムを出荷時の状態へと復帰するための再セットアップディスクを作成するのであるが、これは一度しか作成できない。もし何らかの理由でそれが使用できなくなった場合は有償での提供となる、とのことである。
リカバリディスクは一度しか作成できない。 はっきり言ってこれはナンセンスだ。なぜこのような制約を課すのかが理解できない。もしかしたら同梱ソフトウェアのライセンスの問題であるかもしれない。が、もし万が一そうであったとしても、一括でソフトウェアがインストールできないことと、バックアップ手段を一度しか実行できないことのトレードオフが、このような選択に帰着するのは理解しがたい。
外資系メーカには、製品番号を入力することで対応したリカバリイメージをダウンロードできる企業もある。そのような在り方に慣れた身からすると、面食らったという表現が一番適している。
さらに、当該ディスクについては、単純にディスクイメージをデヴァイスのストレージへ書き戻すといった形態をとっていない。再セットアップを開始してからWindowsの初期設定が始まるまでに数回、Administrator権限で自動ログインし、ユーザ操作不可の状態でなんらかのソフトウェアセットアップを実施する。これは非常に気味が悪い。まずユーザがセットアップしたものではないAdminユーザを自動的に使用していることがまず受け入れがたい。
加えて、ドライバ類の提供がない。アップデートをダウンロードするページは存在するが、OSをクリーンインストールした際に別途ドライバのみをインストールするということができない。
保証の登録について
体験が極めて悪い。
外資系PCメーカでは、保証はPC本体に記載されたコードに紐づけられており、購入時アップグレードを選択した場合は届けられた時点ですでに追加分の保証が登録されている。
一方、本PCでは、あくまで紙の保証書が基本となる。
保証のアップグレードは同梱されたパッケージを用いて、ユーザが登録する。これだけならまだありうる。
が、現実はさらに上を行く。オンライン登録を実施する際、製品同梱の基本保証書をアップグレードパックの保証書に貼り付けたものの画像、および購入証明書の画像を、アップロードしなければならない。
さらに、保証の登録には数日間を要する。これはつまり、画面の向こう側で、人の手を介した確認作業が実施されていると推測される。
郵送でなくなっただけの前時代的な手続き体系であると評せよう。
その他付属品について
キャンペーンで付属したバッグは、買取店へ持ち込んだところ、500円となった。売値が1万円近い商品の新品がこの値段になるのは、ファッション業界の闇深さについて考えさせられる。USBメモリを32GBのものにして、それ以外の花柄グッズを受け取らないようにした方が、結果的な満足度は高かったかもしれない。
USB SSD、USBメモリは、機能した。それ以上は認識していない。
おわりに
ハードウェアとしてのデキの良さとソフトウェアや購入体験の悪さにより評価はmixedといった結果となった。
ソフトウェアの問題は、最終的にLavie Direct PMにWindows 10 Proをクリーンインストールすることで当面の対策とした。なお、この対策に伴い、省電力設定などに悪影響が生じている可能性がある。先述したバッテリ持続時間が参考値でしかないというのはこのためである。
次の記事でセットアップ時の注意点を述べる。
総評としては、いいマシンになりうる素質はある、ということになる。
だが、その実現のためには、多少のセットアップが必要だ。
それはもちろん買ってきたPCはすぐMS提供のWindowsをクリーンインストールするという人であれば問題がない。
がしかし、そういった人々は、まずこのような内資メーカ製PCには見向きもしないだろう。
そして、内資メーカ製PCを好むであろう人々は、決して快適とは言えないソフトウェアのユーザ体験によってスポイルされてしまう。
微妙な惜しさ、歯がゆさじみたものがあり、しかし最初から思想が、提供すべき体験へのこだわりが欠けている以上は、当然の結果、というほかないのだろう。
つくづく、Appleのビジネスのうまさ、ユーザに与える体験、驚き、思想、哲学のすごさについて考えさせられる。
あるいは、雑念を捨てた外資系大手PCメーカの割り切ったビジネスについて。