harmonized world

私たちは予めすばらしい新世界にたどり着いている。

ここ数週間でラブコメを読んでつらく感じることが何度かあった。

オレは床で寝ます! 1 (1巻) (ヤングキングコミックス)

オレは床で寝ます! 1 (1巻) (ヤングキングコミックス)

  • 作者:9℃
  • 発売日: 2020/11/16
  • メディア: コミック

といっても、作品自体につらいところは特になくて、むしろ面白いのだけど(おすすめ)。

つらいのは私の自意識だ。

ある程度の年齢に到達すれば、自分の人生の限界なんて見えてくる。自分の将来に見切りをつけていなければいけない。
私は独身だけど、恋愛や婚姻に積極的でなかったのは、まさに自分自身の選択であり、またそれ以外にあり得ない。
同じく、趣味に対して熱心だったり真摯だったりしたこともなければ、仕事へと情熱を注いだこともない。これらもまた、私自身の選択だ。
であるならば、その責任を取るのもまた、自分自身でなければならない。

まあ、今更何を言っても遅い。
先日、あのPaul Grahamが子供を持ったことについての記事を読んで愕然としたのを思い出す。
review.foundx.jp
私にはパートナーがいないし、肉体的、精神的にも価値や需要が生じるような存在にはならなかった。そうなるためには訓練が必要で、私はそれを怠ったのだ。遺伝的にも劣っているし、医学的にも良い状態にはない。そういう人間が、今から方針を転換しようと試みるのは無理だ。
いや、最初から警報は鳴っていたのだろう。私がそれを無視しただけで。
偉業を成し遂げるような人間なら始めるのに遅すぎるということはないだろうが、凡人未満の私ではそうは行かない。
自業自得、因果応報、自分で考えることをしなかった哀れな人間の末路――

金銭はやりようがあっても、人間関係は再分配できない。パートナーとなる人物は いい子 にしていたボーナスや成功のトロフィーではない。
そもそも、パートナーができたところがスタート地点で、そこに物語で描かれるような幸福感はないし、むしろそのレベルに立ってやっと一段階上の話が始められる、というようなことばかりだ。 趣味や仕事でも同じだ。たとえ才能があったとしても、そのpotentialをkineticなenergyへと変換できなければ、何かを為すことは叶わない。

そこで気づいた。私はすでに物語の中でしかそういった感情を得られなくなっている。

物語には、現実の人間には到底味わえないような感情、喜怒哀楽を想像させる力がある。これはetmlそのものだ。
私(たち)はもはや、現実ではひたすら摩耗し、その分の感情を仮想の世界で摂取して生きる、そういう存在になっているのだ。
ユートピアは予め到来していた。

だから、物語の中の出来事を現実に求めているのは、ばかげていることだ。
みじめな私達も、物語を通じて幸福感を想起できるなら、それで十分だろう。
むしろ、自らのみじめさで物語を汚してはならない。
目の前の作品を純粋に楽しむ機械になりたい。