情報カードについて

はじめに

『知的生産の技術』を読んでいる。ミーハーな私はさっそく情報カードを使うことを始めた。
その結果、古色蒼然な外見に反して、21世紀の現代においても、想像以上に良い道具ではないかという感触を得た。
当記事は運用開始一週間時点での私自身の用法について記載するものである。

情報カードとは

情報を記録・蓄積する目的で使用される、一定のサイズに裁断された厚手の紙のこと。
物理的には『耳をすませば』に出てきた図書室の貸し出しカードのサイズ違いを想像すればよい。
コレクト、ライフ、コクヨなどの文房具メーカが、複数のサイズ、罫で製品化し、製造・販売している。
最近ではダイソーでも無地の情報カードを取り扱っているようである。

サイズの選定

情報カードにはいくつかのサイズがあり、メジャーなのは小さい方から名刺サイズ、5x3、A6、6x4、B6。
特に、『知的生産の技術』で登場したB6・マージン罫入り横罫のフォーマットは、著者の所属組織から「京大式」とも呼ばれる。

今回はA6とB6サイズの横罫を購入し、それぞれに同じ内容を書いて比較し、選定を行った。

A6

  • 小さいため持ち運びに便利
  • 国際規格に基づいている
  • はがきサイズの文具、ノート、手帳と組み合わせやすい
  • 罫が細く、書ける量が多い
  • 文字の密度が高くなり一覧性が下がる

B6

  • やや大きいためバッグ(・イン・バッグ)に入れて持ち歩くなどするのが基本になる
  • ドメスティックなJIS規格に基づいている
  • ファイルなどの選択肢が少ない
  • 罫が太いため書ける量が少ない
  • 文字の密度が低くなり、パッと見の印象がいい

結論

B6を選択した。選定理由は一目見たときの印象の良さ。

現状、コレクトの京大式を使用している。

運用開始初期段階での所感

良い点

  • ノートのように時系列を考える必要がない。
    • ノートは本来必ずしも順序がないものを順序付けてしまう
      • kaoriha.org
      • 持ち運ぶための妥協として有り得るが、必須ではない
  • 一冊の冊子としてどういう構成にするかについて考える必要がなくなる
  • 規格化された表記によって思考がまとまる(ような気がする)
    • 一つのトピックについてのみ注目して書く
    • 書ける量が少ないので、重要なこと、本質が何かについて注意するようになる

悪い点

  • 持ち運びにくい
    • 情報カード一般の欠点として綴じられていないためばらけてしまう
    • B6固有の欠点としてサイズが大きいため手帳のようには持ち歩けない

現在の運用

  • コレクトのパース、キングジムのドキュメントファイル、コクヨ測量野帳を持ち歩く
  • 未使用のカードはコレクトのパースに入れて持ち歩く
  • 思いついたことは極力測量野帳にメモする
  • 測量野帳に書いた事項の中で、残しておく価値があると判断した内容をタイトルにした情報カードを作成する
  • 書いた後のカードは一時的にパースの筆記スペースに入れておく
  • 筆記スペースのカードはなるべく早い段階でキングジムのドキュメントファイルへ移す
    • 最初は1番目のポケットに格納する
    • 関連するテーマ、ジャンルのカードが集まったら2番目、3番目のポケットへ移動する
    • 別のメディアへ転記するなど、活用が終わったカードは一番奥のポケットへ移動する
  • 定期的にドキュメントファイルの中身を見直し、特に1番目のカードを走査する
    • 思いついたことがあったら追記する、または新しいカードを作る
  • 他のメディアへ転記するなど、活用が終わったカードは、コクヨの収納ボックスへ移動する

今後の展望

今後、単純にカードの蓄積を進めると、カード枚数は単調に増加していく。これは二つの意味で危機的状況をもたらす。
一つ目は占領するスペースの増大。一般に部屋は有限なので、占有スペースが増大することは喜ばしくない。
二つ目は検索性の悪化。カードが増加すればするほど、目的とする、あるいは新しい発想を生むカードがヒットする確率が低下する。

Scansnapに代表されるADFつきドキュメントスキャナを用いて画像ファイルにスキャンすることが対策として考えられる。
これは一つ目の問題を解決するが、二番目は解決しない。
なぜなら、スキャンによってカードは画像データとなるが、カードに書かれている情報は電子化されていないからだ。
画像化されたカードは、書かれている内容で検索できるようになるわけではない。OCRの使用が有り得るが、これも現状では万能ではない。
さらに悪いことに、電子化されたファイルはノートと同じく順序付けられてしまう。紙のノートほど固くないが、情報カードほど柔軟でもない。
結局、カードの内容をテキストとして入力する、少なくとも手動でのタグ付けをする必要が出てくる。
そんな時間が人間にあるだろうか(いや、ない)。

参考資料

原典

使用しているもの

PoIC (Pile of Index Cards)

優れた性質の源泉

世界ではじめて音速を超えて飛んだChuck Yeager准将は、飛行機のエンジンを次のように誉めていました。「単純で、部品が少なく、保守がしやすく、とても強固」と。

ジョン・ベントリー, 小林健一郎. 珠玉のプログラミング 本質を見抜いたアルゴリズムとデータ構造. ピアソンエデュケーション, 2000.

続きを読む

いい道具は定義できるか

TD;DR

「基本性能に絞って、プロ向け製品に求められる性能項目を高めた、低コストで運用できて、実用域で活躍するもの」
「オーソドックスな使い方をするもので、初心者が無理なく使えて、上級者でも快適に使えるもの」
と筆者は考えたのだった。

「いい道具を買おう」とみんないうけれど。

何らかの初心者へ向けられる言葉に「最初からいい道具を使うほうがいい」というものがあり、なるほど、もっともである。いい道具は初心者を助けてくれる。技量が低い人ほど、いい道具を使うべきだ。

では、いい道具とはどんなものだろうか。この定義にまで踏み込んでアドバイスしてくれるひとはあまりいない。そもそも ill-defined な問題であるとする人もいるだろう。議論を重ねたところで、せいぜい「最低価格帯の安物を回避する」くらいのことでしか合意できないのではないか。

いい道具とは何か。過剰でも不足でもない、適切なもの。でも、過剰とか不足という言葉は難しい。適切にと同じくらい難しい。何故なら、それがわかるということはつまり、既に正解を知っているということだからだ。

それでも、過剰な道具、というものは存在するはずだ。たとえば、写真の入門者にリンホフマスターテヒニカを勧めることは、まず適切ではないだろう。

以下に思いついた事項を並べてみよう。

続きを読む

Samsung SSDのデータ消去

TL;DR

  • SSDのつながったPCをGPartedで起動して、hdparmを使ってsecurity eraseすると公式アプリのSecure Eraseと同等になる模様
  • USB変換を使わないこと。使ってもできるときはできるが、ペーパーウェイトになっても文句は言えない

動機

SSDを手放すのでセキュアにデータを削除したいが不自由で邪悪な公式ソフトを使いたくない!

公式サイトの記載

www.samsung.com

OS 環境で Secure Erase を実行するにはどうすれば良いですか?

Linux : DOS モードに進むか、 以下に示す hdparm コマンドを使用します。

  1. バイスを確認します。(今テストするデバイスを確認します。)
    $ sudo fdisk -l
  2. バイスのステータスを確認します。(手順 1 でテスト デバイスが /dev/sdb であると仮定します。)
    => "not frozen" でないと、Secure Erase を実行できません。
    $ sudo hdparm –I /dev/sdb
  3. パスワードを設定します。(次に示す例では、パスワードに NULL を使用することを推奨しているため、NULL に設定されます。)
    $ sudo hdparm --security-set-pass NULL /dev/sdb
  4. Secure Erase を実行します。
    $ sudo hdparm --security-erase NULL /dev/sdb

[ 参考資料 ]
- http://linux.die.net/man/8/hdparm - http://tinyapps.org/docs/wipe_drives_hdparm.html

やったこと

LinuxマシンにSSDを接続して上記の手段を実行した。アーキテクチャ依存のコマンドではないのでARMのマシンなどでも実行可能。

Linuxマシンが手元にない場合はGPartedを使うとよいだろう。データ救出にも使えるのでUSBメモリを一つ作っておくと便利。

gparted.org

☆しゅがはドライブ☆の☆円盤☆

27sai-club.booth.pm

すごくよかった。私はアイマスに全然触れてこなかった身なので、よくわかっていないネタも多いけど、楽しい。愛を感じる。

それにしても、こういう、作中世界のコンテンツ、というていで描かれた作品が大好きで、もうほんとにドツボにはまってしまう。

ちゃんと、作中の世界がそこにあるんだって、感じられる作品はとてもいとおしい。もちろん、作中の緻密な描写で描き切るのが王道だし、優れた作品だと思うけど、私は本編や設定の集積から想定される世界を緻密に描いたスピンオフ的なものにものすごく惹かれてしまう。

例を挙げるとこういうのとか。

よく考えたらガルラジもそうだ。

garuradi.jp

方向性としてはこのあたりも結構近いか。

lavenderquartz.com

booth.pm

www.lack-girl.com

www.melonbooks.co.jp

dangerdrop.tumblr.com

こういうコンテンツをもっと大量に摂取したい。こういうのもっとありませんか? 増えてほしい。

あとミラトコットもムーブキャンバスもデザインいいよね……いい……。トコットはいまだに欲しい……。

Salvaged

TL;DR

2年前突然死して文鎮化したNexus 5Xからデータを救出した。

Sudden Death

Nexus 5Xは突然死するタイプの端末である。突然電源が切れ、起動途中でフリーズしたり再起動ループに陥ったりする症状が現れる。

これは、当該機種の電子基板へ熱サイクルが印可されることによって、SoCの接合部ではんだクラックが生じるためだと考えられている。

en.wikipedia.org

ブートループが発生した個体に対して、中長期的に信頼性のある修理を施すことは、少なくとも素人の手には負えない仕事であると思われる。 しかしながら、ごく短期間――たとえばバックアップを取っていなかったデータをサルベージする間――だけであれば、 相応の準備と多少の幸運によってこれを達成することができるかもしれない。

Preparation

ケータイ修理キット

私はiFixit Pro Tech Toolkitを持っていたのでそれを使った。

Pro Tech Toolkit - iFixit

が、実質的にはピックと精密ドライバーくらいしか使わなかったのでもっと適当な安いやつでよろしい。 私が持っているわけではないけどこういうのとか。

Y型ドライバー

ドコモ版の場合、インナフレームを取り外す際にY型ドライバが必要になる。残念ながらPro Tech Toolkitに含まれるビットでは回らなかったので、専用品を別途購入した。

アネックス(ANEX) Y型 特殊精密差替ドライバー No.3607

アネックス(ANEX) Y型 特殊精密差替ドライバー No.3607

  • 発売日: 2013/08/05
  • メディア: Tools & Hardware

ヒートガン

ある程度信頼できるメーカのものならなんでもいいはず。Amazon.co.jpが販売してないよくわからんメーカのやつはやめよう。

有名メーカ製で小さいという基準でSUREのプラジェットミニを購入した。

www.sure-ishizaki.co.jp

ヨドバシ.com - 石崎電機製作所 SURE シュアー PJ-M50 [小型ヒートガン プラジェット・ミニ] 通販【全品無料配達】

Operation

だいたいこの動画の通り。分解して、基板を取り出して、SoCのあたりをヒートガンで加熱する。 方法論としては焼きGPUに近い。

www.youtube.com

裏蓋を外すのはSIMスロットを外してそこに三角形のピックをいれればやりやすい。

電池は危険なので熱や衝撃、物理的ダメージを与えないよう注意して。

SoCは基板の画面側に実装されている。

Nexus 5X Teardown - iFixit

電子基板のシールドを外したりフラックスを落としたりするのは省略してよい。

インナフレームまで組むと電源ボタンが押せるようになるのでそこまで組み立てたら充電して電源供給してみる。 運が良ければ数分間は動作してデータを吸い出すくらいのことはできるだろう。 だめなら同じことを繰り返してみる。 パワードUSBハブがあると充電しながらPC接続ができるのでやや有利。

Afterword

元よりどうせ死んでいる機体である。データを救出できれば儲け物、くらいの気持ちで挑戦してみるのが良いだろう。 あまり期待しすぎないように。失敗してとどめを刺してしまっても仕方ないと諦めるように。あと、火事や怪我をしないように。ヒートガンの熱風が向かう先に常に注意を向けること。

グッドラック。