Microsoft Wordで.docxファイルから追加費用なしでOpenTypeフォントを埋め込んだPDFを作成できるか

TL;DR

少なくともこの記事を書いている時点では無理っぽい。

序論

MS OfficeはPDFを作成できるが、その際にOpenTypeフォントを埋め込むことはできない。

docs.microsoft.com

PDF/Aで出力してもラスタ化されてしまい、フォントが埋め込まれることはない。

もちろん、Adobe Acrobatを持っていればできる。今はクラウド版しかないから、必要になった時だけひと月単位で契約もできる。

acrobat.adobe.com

しかもAdobe Fontsの使用権までついてくる。商用非商用問わずPDFへの埋め込み全部オーケー。すごい。

helpx.adobe.com

しかしながら、無料ではない。いや、もちろんMS Wordだって不自由で邪悪なプロプライエタリ・ソフトウェアであるのだが……。

Microsoft Print to PDF

何を試したか

Windows 10に標準? で入っている仮想PDFプリンタ。Wordの印刷画面からPDF出力。

結果

あらゆるフォントはラスタ化されます。慈悲はない。

clawPDF

何を試したか

clawPDFはAGPLでライセンスされたフリーソフトウェアの仮想PDFプリンタである。Wordの印刷画面からPDF出力した。

github.com

結果

すべてのOpenTypeフォントは埋め込めているが、日本語の文章では一部の文字が消えてしまい、使い物にならない。

JUST PDF 2

何を試したか

ヒラギノフォントについてきた一太郎プレミアムのインストールメディアから、JUST PDF 2をインストールした。このアプリケーションもまた、仮想PDFプリンタとして動作する。Wordの印刷画面からPDF出力した。

www.justsystems.com

www.justsystems.com

なお、最新版はJUST PDF 4である。最新版での動作は未確認である。また、4からはプリフライトチェック機能が付いたようだ。

www.justsystems.com

結果

一部のOpenTypeフォントは埋め込まれた。が、Source Han Sans/Serifは埋め込まれなかった。Super OTC版を使っているからかもしれない。

Libreoffice Writer

何を試したか

LibreOffice Writerで.docxファイルを開き、PDFとしてエクスポートした。

ja.libreoffice.org

結果

すべてのOpenTypeフォントは埋め込まれた。日本語も適切に扱われている。しかし、.docxファイルを開いた時点でレイアウトが崩れている。

結論

人生は厳しい。Adobe税の脱税はできない。

正しくて快適なAdobe Creative Cloudをご利用ください。

Postscript

いつのまにか無償で使用可能なPDF/AおよびPDF/Xのプリフライトチェックツールが登場している。

これらのドキュメントが作れる身分になったら試したい(でもそれってAdobe Acrobatが使える状態なのでは?)。

veraPDF

EU fundedのプロジェクトからfundされている、PDF/A Validation アプリケーション。

PDF/Aの存在意義である長期保存性が活きる領域といえば、公文書なのだろうし、納得のいく話ではある。

verapdf.org

JHOVE

様々なフォーマットのvalidationができるJava API。そのPDFモジュールではPDF/AやPDF/XのValidationが行える。

こちらはStanford Univ. Libraryがからんでいるようだ。

jhove.openpreservation.org

Q&A

Q「て、TeXを使ってみては? 頼もしいものなんですが」

テフの問題は解決されないので……

kaoriha.org

何かOpenTypeフォントを埋め込んだPDFドキュメントを作成する必要があるの?

いいえ、特に同人出版等の予定はございません。