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「基本性能に絞って、プロ向け製品に求められる性能項目を高めた、低コストで運用できて、実用域で活躍するもの」
「オーソドックスな使い方をするもので、初心者が無理なく使えて、上級者でも快適に使えるもの」
と筆者は考えたのだった。
「いい道具を買おう」とみんないうけれど。
何らかの初心者へ向けられる言葉に「最初からいい道具を使うほうがいい」というものがあり、なるほど、もっともである。いい道具は初心者を助けてくれる。技量が低い人ほど、いい道具を使うべきだ。
では、いい道具とはどんなものだろうか。この定義にまで踏み込んでアドバイスしてくれるひとはあまりいない。そもそも ill-defined な問題であるとする人もいるだろう。議論を重ねたところで、せいぜい「最低価格帯の安物を回避する」くらいのことでしか合意できないのではないか。
いい道具とは何か。過剰でも不足でもない、適切なもの。でも、過剰とか不足という言葉は難しい。適切にと同じくらい難しい。何故なら、それがわかるということはつまり、既に正解を知っているということだからだ。
それでも、過剰な道具、というものは存在するはずだ。たとえば、写真の入門者にリンホフマスターテヒニカを勧めることは、まず適切ではないだろう。
以下に思いついた事項を並べてみよう。
いい道具が持っているもの
得られる性能とメンテナンス、運用にかかるコストの比が大きい
言ってしまえばコスパがいいってことだ。
ユーザが使用する動作領域での性能がよい
車で例えるとドッカンターボよりも低回転から太いトルクがあるほうがうれしいって話。
動作領域から外れたとしても急激には不安定にならない
少しでも限界を超えるとスピンするとか、壊れるとか、そういうのは良くないよねってこと。
製品企画的に尖ったところがない一方で、基本性能の高さに由来する汎用性があり、ユーザの用途を制約しない。
何かに特化したデザインで、というよりは、基本性能の高さで汎用性を持たせる、という思想に基づいた道具は、応用が効く傾向があると考えている。
耐久性が良い、または使い捨てられるくらいに安価で入手性がよい、維持管理がユーザの重荷にならない
出し惜しみをしなきゃいけないようではあまり実用的とはいえない。思いっきり使いたい。
ユーザが使いにくいと感じない
……これはまあ個人の好みも多分に含まれてしまうのかも。
複雑なパラメタがあるとしても、それを単純化できる手段がある
設定に初心者モードと上級者モードの二つがあって、前者だけでもぼちぼちの設定ができること。
上級者向け機材で売りになっている性能項目が優れている
要するに基本性能が大事って話です。
「子供向けであっても子供だましではない」
……パクりじゃん。
「初心者が無理なく使えて、上級者も快適に使える」
基本がしっかりしていればこうなる、と思っていたいけど、机上の空論かも。
業界や分野における標準的なやり方を学べる
メーカや採用している規格で流儀が大きく変わってしまう分野というのがあるので、なるべく標準的、身の回りで使われているようなものを選ぶと意識しておきたい。
アップグレードパスが用意されている、他の道具と組み合わせることでより大きな力を発揮できる
ある道具で覚えた経験が次に活かせなくなる、どん詰まりになってしまうのは悲しいので、そうならないような体系ができてると嬉しい。
おもちゃではなく、強力で柔軟で、大きなプロジェクトにも適用できる
LISPに抱いているイメージです。 toy problem的であっても、何度でもそこへ戻って遊べるようなtoyがいい
いい道具が持たないもの
上級者しか扱えないほど設定や調整が複雑、使いにくい、使用上の落とし穴がたくさんある
複雑なパラメタを生のまま自分一人で扱わないといけないのは大変。
逆に、初心者しか買わない、欲しがらない、使いたがらない。たとえば上級者が見向きもしないような「おもちゃ」機能が沢山ついているもの。
子供だまし。
使用者が少く、調べても情報が出てこない
人柱になって布教したい、というモチベーションがないなら、情報があるほうがうれしい。
特定の用途や、ピーク時の性能を発揮することに特化している
これはこれで重要だったり、楽しかったりもするけど、初心者のための道具とは、あまり言えない。
得られた経験を他のものへ活かしにくい、経験を積む以前に挫折させてしまう
汎用性のある知識、経験を積んでいきたい。
高性能である代わりに高級すぎて維持がままならない、積極的に持ち出そうと思えない
たしかにフェラーリの車はいい車だろうけど、維持が大変すぎるって話。
つまり……?
結論は冒頭に書いた通り。初心者しか使わないものはダメ、上級者しか扱えないようなものもダメ、基本性能が大事、ってことですね。
結局は良さを定義する問題を基本性能を定義する問題へと移し替えただけなのでは? うーん……。
まあ、良い道具が何かを最初から見極められたら苦労しないので、信頼できるメディア、人、店を探していくしかないのかもしれない。
もちろん、迷ったら売れ筋のものを選ぶというのも一つの手ではある。少なくとも情報はたくさんある。