規約と活字

告知事項

私は法律家ではない/これは法的な助言ではない

tl;dr

  • myFontsやfonts.comで買ったり月額課金したりした欧文書体の大半は、フォントを埋め込んだPDFを商用利用することができない。
  • OSやOffice添付のフォントは個別フォントのEULAが公開されておらず曖昧にぼかされているけど、厳密に言えばおそらく駄目
  • TypeKitや一太郎プレミアム、Designcuts、TrueTypeフォントパーフェクトコレクション で買ったフォントはライセンス上安全。
  • SIL OFLでライセンスされたフォントもたぶん安全。
  • LaTeXのライセンスもきっとだいじょうぶ。

はじめに

過去に、入手しやすいフォントについての記事を書きましたが、フォントのライセンスに関する理解と記述が不足していたため、この記事を書きました。

squeuei.hatenablog.com

が、告知事項の通り、私は知財法令どころか法律の素養もないため、この内容は無保証です。

ちゃんと調査するための足がかり程度にとらえていただければ幸いです。

問題に近づかない

問題の多くは

  1. 商用利用
  2. PDFへのフォントファイル埋め込み

によって生じます。ですので多くの場合は

  1. 無償で配布する
  2. フォントファイルを埋め込まないラスタ化したデータを使用する、あるいはPDFで配布せず紙書籍のみで使用する

とすることによって、これらの問題は解決されます。具体的な例としては以下が挙げられます。

  1. PDFを無料配布する
  2. 表紙やロゴのみで使用する
  3. フォント埋め込みを用いないマンガで使用する
  4. 小説本を全てラスタライズした後で販売する
  5. 紙書籍だけで使う

つまりこの問題は小説等の文字を主とする書籍のPDFを対価を取って配布する場合に生じることが多い、ということです。

EULA比較

商用フォント 無償配布、ラスタ化 無償配布、PDF埋め込み 無償配布、ePub 有償配布、ラスタ化 有償配布、PDF埋め込み 有償配布、ePub
SIL OFL NO △:ライセンスの写しを添付すれば可
GPLフォント例外 NO
Latex Project Pulic License NO ○? ○? ○? ○? ○? ○? 大丈夫という認識だが確証なし
GUST License NO ○? ○? ○? ○? ○? ○? 大丈夫という認識だが確証なし
Bitstream Vera Fonts License NO ○? ○? ○? ○? ○? ○? 大丈夫という認識だが確証なし、ライセンスの写し添付が必要?
IPAフォント NO △:ライセンスの写しを添付すれば可
GPL NO △:書籍をGPLでライセンスすれば可
一太郎 YES FAQで言及
TypeKit YES FAQで言及
TrueTypeフォントパーフェクトコレクション YES × × FAQで言及
Monotype(Desktop License) YES × × × EULAで言及
OS標準搭載 YES ×? ×? ×? ×? ×? ×? ダメという認識だが確証なし

以下雑感

  • 一太郎とTypeKitの安心感がすごい。ありがとうジャストシステム。ありがとうアドビ。ただし一太郎はリフローEPUBがダメなフォントもあるので詳細はFAQを参照のこと。
  • LaTeX系とVera系のライセンスが全然わからない。そもそもがそういう目的なんだし大丈夫なんじゃないかな……くらいの希望的観測で大丈夫と認識している。が、確証がほしい……。
  • FEなしのGPLでライセンスされたフォントを使うと本自体がGPLでライセンスされなければならないという特大の罠が存在する。
  • macOSにしろWindowsにしろ、OSのEULAでは、フォントベンダのEULAに従うという書かれ方をしているようである。が、OSに標準搭載されるフォントのEULAがどのようなものであるかについては、おそらくは各ベンダへ直接問い合わせない限り、答えは出ないものと思われる。安全性を重視するなら回避するべきでしょう。
  • Monotypeは公式から購入したからなんの問題もない、と思っているとおそらくは痛い目を見る。Desktop License の EULA によると、PDF埋め込みが許可されるのは非商用のみ。
  • Desktop Licenseを買っただけでは、たとえ公式で1ファミリーまるまる揃えたとしても、規約違反なしではフォントを埋め込んだPDFを販売できない、それはmyFontsやFonts.comのサブスクリプションでも同じ、という事実が割とショック。
  • ePubになるとよりややこしくなる。だいたいライセンスの添付が必要。

使いそうなフォントについて

商用フォント 無償配布、ラスタ化 無償配布、PDF埋め込み 無償配布、ePub 有償配布、ラスタ化 有償配布、PDF埋め込み 有償配布、ePub
Google Fonts NO SIL OFL
Source Han /Noto Fonts NO SIL OFL
Fira Sans / Fira Mono NO SIL OFL
Cardo NO SIL OFL
GFS Fonts NO SIL OFL
Overpass NO SIL OFL
Bitstream Vera NO ○? ○? ○? ○? ○? ○? Bitstream Vera Fonts License
DejaVu Sans NO ○? ○? ○? ○? ○? ○? Bitstream Vera Fonts License
ET Book NO △? △? △? △? MIT License
MgOpen NO △? △? △? △? MgOpen License
Epigrafica NO △? △? △? △? MgOpen License
URW++ Base 35 NO AGPL+FE/LPPL/SIL OFLのため可
URW++ GhostPDL × × × 少なくとも商用は不可 書籍をAFPLでライセンスすればOK?
M+フォント NO
VLフォント NO △? △? △? △? M+ / 修正BSD
IPAフォント NO IPAフォントライセンス
Takaoフォント NO IPAフォントライセンス
Miguフォント NO IPAフォントライセンス
  • URW Base 35がAGPL+FE/LPPL/SIL OFLというのはどこを公式見解として見ればいいのか微妙。GitHubにレポジトリがあったけどURW++公式であるという保証はない……。

おわりに

というわけでSIL OFLの上をそろりそろりと歩くか、TypeKitと一太郎に金を積めばわりと解決する問題、という結論になりました。

今回の調べ物をしたきっかけはmyFontsのFontacularで販売されたMonotype Fontacular BundleEULAを読んでびっくらこいたことなんですけど、それにしてもリーガル関連の事柄ってちゃんと守ろうとすると大変ですね。

蛇足

ここまで調べておいてちゃぶ台ひっくり返すけど、ぶっちゃけ同人活動なんて海軍ではなく海賊なんだから誰も気にしないし、フォントベンダもたかが少部数の出版物で適切に利用されてるかなんて大して興味なくない!?(ライセンス違反を推奨するものではない)

参考文献

総論

ライセンス

フォント